クルマのエアコンが故障すると、クルマが動かないことに次いで憂鬱になります。エアコンは車内を快適に保つ大切なパーツですが、故障するとかなりの高額な修理金額になることが多いでしょう。
ただし、エアコンが効かない原因には、人為的ミスもあります。エアコンの操作ボタンを間違えたといったミスはかなり多く見られるので、エアコンが効かない時は冷静にエアコン操作パネルを注視してみましょう。
ここでは、エアコンが効かない原因と修理費用を詳しく解説し、エアコンが効かない場合の対処方法も併せて解説します。
自動車鈑金工場で高卒から10年ほど修行し、その後独立して自分の自動車鈑金工場を設立。中古車の粗悪さが許せず、中古車買取と鈑金修理を一つにしようとオークションに出入り。普通のクルマだけでなく修復歴車を落札して修理し直して販売や事故車を修復する仕事を20年程度行う。現在は財経新聞などにも記事提供を行うクルマ専門ライターとして活動中。
エアコンが効かない原因と特定方法は?
エアコンの不具合には、冷えない・暖まらない場合のほか、風量調節ができないといったことがありますが、特に多いのが冷えないトラブルでしょう。
そして、冷えないトラブルの代表としてエアコンを冷やすフロンガスの不足が考えられます。
しかし、エアコンが冷えないからと、エアコンガス補充を安易にするのも良くありません。というのも、間違ったエアコンガスの補充は、逆にエアコンシステムにトラブルを起こすからです。
特に、アルバイトに任せているような店舗などで充填依頼すると、充填状態をよく確認せずにオーナーの依頼通りに作業を始めます。その時に規定以上のガスが入ると逆にエアコンが効かなくなり、コンプレッサーの故障に繋がります。
そこで、ディーラーやきちんとした整備工場、そしてデンソーなどカーエアコン特約店のお店でエアコンガスのチェックをしてもらいましょう。
エアコンが効かない原因には、おもに以下の3つが考えられます。
- ①エアコンの操作ミス
- ②エアコンフィルターの目詰まり
- ③エアコンシステムの異常
原因①エアコンの操作ミス
エアコンが効かない場合に意外に多いのが、エアコンの操作ミスです。
エンジンを切るたびにエアコンのスイッチを切らない人も多く、これがエアコンの操作ミスにつながっています。
A/Cボタンをまず確認
冷風が出ない時に、確認したいのがA/Cスイッチです。不意にモノがあたったり子供がスイッチを触ってしまったりなど、何かの拍子でA/Cスイッチがオフになっていることがあります。
エンジンのオンオフに関わらず、エアコンのスイッチを入れっぱなしにしてある人は確認してみましょう。
暖房が効かない場合は水温計が上昇しているかを確認
暖房が効かない場合はメーター内の水温計が適正温度になっているか確認しましょう。
クルマの暖房は、エンジンの熱を利用してヒーターを作動させています。水温計の針が適正の位置まで上がっていない時や、水温インジケーターの色がコールドのままなら暖房は出ません。
ただし、10分以上たっても水温が適正にならない時は、冷却水の機構に故障が考えられますので、一度プロに見てもらったほうが良いでしょう。
原因②エアコンフィルターの目詰まり
次に考えられるのがエアコンフィルターの目詰まりです。
最近のクルマのカーエアコンには、クリーンフィルターが取り付けられています。このクリーンフィルターは、家庭用エアコンと同じように、ホコリなどを吸着させる役目があります。
また最近では、普通のフィルターだけでなくウィルスや花粉などを除去する高機能フィルターも装着されており、車内の空気をクリーンに保つよう設計されています。
エアコンフィルターは1年1万キロを目安に交換
クリーンフィルターは清掃でもある程度綺麗にすることは可能ですが、完全な機能回復はできません。そこでメーカーでは10,000万kmもしくは1年での交換を推奨しています。
クリーンフィルターは、3,000円程度でカー用品店でも購入できるアイテムで、自分でも比較的簡単に交換できます。もし、エアコンの風量が落ちたり効きが悪いと感じたら、エアコンフィルターを確認しましょう。
原因③エアコンシステムの異常
エアコンの操作ミス、フィルターの目詰まりでもないとなると、考えられるのはエアコンシステムの異常です。
温度調節を変化させても、吹き出し口の温度に変化がない時には、エアコン機構に不具合が考えられます(冷たくする場合は、A/Cスイッチを入れて温度調整することを忘れないようにしてください)。
エアコンシステム異常として代表的なものは以下の通りです。
- エアコンコンプレッサーの故障
- エバポレーターの故障
- 電装関係の故障
- 配管の故障
エアコンコンプレッサーの故障
エアコンガスも十分入っているのに、エアコンが効かない代表的な故障に、エアコンコンプレッサーの不具合があります。
エアコンコンプレッサーは、エンジンの動力を介してフロンガスを圧縮している装置です。そのため、エアコンベルトが切れるなどの不具合でもエアコンコンプレッサーは動きません。
また、長く使用していると、エアコンコンプレッサーは不具合を起こし正常に作動しなくなり、冷風が出なくなります。
ボンネットを開けてA/Cスイッチを入れた時の音をチェック
エアコンプレッサーに異常がないかの確認方法は、エンジンを始動させてボンネットを開けます。そしてA/Cスイッチを入れた時に「カチ」という音が聞こえれば作動していますが、もしA/Cスイッチを入れても音が何も聞こえなければ、エアコンコンプレッサーの異常が疑われます。
エバポレーターの故障
エバポレーターとは熱交換器のことで、エバポレーターが故障すると冷えなくなります。
例えばエバポレーターに小さな穴が開くなどしてフロンガスが漏れている場合や、車内のホコリや泥などがエバポレーターに絡みつき、目詰まりを起こして風が通らなくなることで起きるトラブルが多いです。
エバポレーターはインパネ内部に取り付けられており素人が確認するには難しく、不具合があるかどうかの確認はプロに任せましょう。
ちなみにエバポレーターは、取り込んだ空気を冷やす役割を担っています。最初に、コンプレッサーで圧縮されたフロンガスが液体に変わりコンデンサー(クルマのラジエーターの前についている熱交換器)で冷やされます。冷やされたフロンガスは、エキスパンションバルブと呼ばれる噴射装置から一気にエバポレーターに噴射されます。すると液体のフロンガスは一気に気化して周りの熱を奪いエバポレーターを冷やしています
電装関係の故障
フロンガスの状態やコンプレッサーに問題なくても、電気系統で不具合が起きると正常に作動しなくなります。
最近のクルマは、オートエアコンが多くなり、エアコンもコンピューターにより制御されています。その制御には、多くのセンサーからの情報をコンピューターが解析し、適正な車内温度になるようにしているので、センサー1つに不具合がでても、エアコン不調に見舞われます。
最近は高級車だけでなく、ファミリーカーにも細かい制御技術が使われ、エンジンとの同調もコンピューターにより管理されています。
ファンスピードを変えられるか確認
電装系の不具合を特定する方法の一つとして、エアコンをマニュアルモードにしてファンスピードがLoからHiまで切り替えで強さを変えられるか確認する方法があります。
最近のクルマはオートエアコンが多いので、ファンスピードも自動で調整されています。しかし、何かの拍子でマニュアルモードになり、ファンスピードがLoに変わっていることもあります。
もし、マニュアルモードにしてファンスピードを変えても風量に変化がないは、電装系に不具合があると判断できます。
配管の故障
エアコンの不調で昔から多いのが、フロンガスが通る配管のトラブルです。
クルマは走行すると振動が発生しますが、この振動が長年続くことでエアコンの配管に亀裂が発生します。すると、フロンガスが漏れ出し、エアコンの効きが悪くなり、最終的に全く冷えないといったトラブルに発展します。
エアコンの配管は、エンジンルームから車内にまで入り込んでいるので、その不具合を見つけるには、専門業者でなければ難しいでしょう。
クルマのエアコン修理の費用目安は?
エアコンが効かない場合、症状により修理費用は大きく変わります。一番安いのはエアコンガスチャージですが、ガス1本2,000円前後で工賃1,000円前後が一般的です。
例えばカー用品店のジェームスでは1本入れるのに3,850円の費用がかかり、軽自動車でも2~3本かかるので、6,600円から9,350円かかります。
このように、ガスチャージだけでもかなりの費用が掛かるので、エアコンシステムが故障するとかなりの高額修理に発展します。
高額なエアコン修理費用でクルマを買い替えるなら、まずは愛車を中古車一括査定で査定しましょう。一度に多くの査定業者に査定依頼すれば、条件の良い金額を探すことができますから今すぐチェックしましょう。
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冷たい風が出ない時・・・2万円~20万円程度
冷たい風が全く出ない場合や、少ししか冷えない場合は、フロンガスの量が少ない場合が多いでしょう。しかし、基本的にエアコンシステム内のフロンガスが漏れ出すことはないので、フロンガスが減るということは、どこかに異常があるということです。
そして、冷たい風が出ない場合のおおよその修理費用は以下のようになります。
修理項目 | おおよその金額 |
---|---|
エアコンガス配管修理 | 2万円~5万円 |
エアコンコンプレッサー修理 | 5万円~20万円程度 |
エバポレーター修理 | 5万円前後 |
暖かい風が出ない時・・・1万円~3万円程度
車内が暖かくならない場合は、エンジンの水温が適温まで上昇していないことが考えられます。その場合は、サーモスタットと呼ばれる部品の不具合が濃厚でしょう。
そのほか、車内のエアミクスドアの不調も考えられます。これは、車内に冷風と温風を送る部分の切り替えのドアで、このドアの動きが不調になると車内はいつまでも暖まりません。
一般に、暖かい風が出ない場合は、以下のような修理金額が相場です。
修理項目 | おおよその金額 |
---|---|
サーモスタット交換 | 1万円前後 |
エアミクスドア修理 | 3万円前後 |
全く風が出ない時・・・2万円前後~
エアコンの故障で、全く風が出ない原因はブロアモーターの故障がほとんどです。ブロアモーターとは、冷たい風や暖かい風を車内に送り込む扇風機のような装置で、ほとんどのクルマの足元に設置されています。
このほか、最近のクルマは、コンピューター制御でエアコンが稼働するので、コンピューターが誤作動してもエアコンの風が全く出ないこともあります。
エアコンの風が出ない場合のおおよその修理費用は以下のようになります。
修理項目 | おおよその金額 |
---|---|
ブロアモーター修理 | 2万円~3万円 |
コンピューター制御系の修理 | 1万円前後~ |
エアコン修理費用が高額になると言われたら
エアコン修理費用は、高額になることがほとんどです。また、新しいクルマより古いクルマのほうが故障するリスクが大きいとも言えます。
ただし、比較的新しいクルマでも、走行距離が著しく多い場合でエアコンをフル稼働していれば、故障リスクは高まります。
そこで、比較的新しいクルマなら修理してもう少し乗っても良いですが、古いクルマの場合経年劣化を含めて多くの部分で故障が多発している可能性もあるので、買い替えも検討したほうが良いでしょう。
古いクルマがエアコン故障して買い替えを検討するなら愛車を一括査定してみましょう。一度に多くの業者に査定依頼すれば、高額査定を引きだせますから今すぐチェックしましょう。
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古いクルマなら買い替えを検討する
古いクルマは、各部にダメージが蓄積され、エアコンも複数故障の可能性があるでしょう。
そして、古いほど原因究明に時間がかかり、特定しても複数故障、またはこれから故障する可能性が高いことから、高額な修理費用になるでしょう。
そこで、古いクルマがエアコン故障したなら、買い替えを検討したほうが安全です。
古いクルマは故障が複数発生している
古いクルマのエアコンは、1か所故障を見つけても、同じ時間を他の部品も共有しているので、当然他の部品も同じように劣化しています。
そのため、1か所の修理で良かったと思うのではなく、まだ故障する可能性があることを理解したほうが良いでしょう。そして、修理をするにしても他の部分で故障する可能性について、修理業者とよく相談することも重要です。
買い替えするなら買取業者に依頼
エアコン故障で買い替えを選ぶなら、今乗っているクルマは買取業者に相談しましょう。
この時、エアコンが不調でも中古車買取に一度相談するべきです。エアコン故障は減点対象ですが、クルマによってはエアコン故障でも高額で買取してもらえることもあるからです。
また、中古買取で買取不可と言われた場合は、廃車買取に相談すると処分料をかけずにクルマを処分できます。また、廃車買取ならクルマの状況次第で現金化も可能なので利用をお勧めします。
もう少し乗りたいなら中古部品の使用を検討
エアコン故障しても、もう少し乗り続けたいこともあるでしょう。しかし、費用が高額では直すことに躊躇してしまいます。そんな時には中古部品を使用すると安く修理できます。
しかし、中古部品を使うと、またエアコンを使用できますが、一時しのぎ程度に思ったほうが良いでしょう。
中古部品は部品代は安いが長くもたない可能性がある
中古部品が長くもたない可能性がある理由は、すでに使用された商品であり、オーバーホールもされない現状での販売のためです。
また、どのような使い方をされたかもわからないので、中古部品を使用する時は、できるだけ早く買い替えを検討したほうが良いと言えます。
ただし、数年使用したいのであれば、少し割高ですが新品より安いリビルト品を使用すると安心して乗り続けられます。
リビルト品は、中古部品の悪い部分を新品部品に交換してあるので、新品までのクオリティはありませんが、中古部品より安心して使用できます。
エアコンが効かない場合の応急処置
エアコンが効かない場合、そのまま整備工場などに点検に出せる状況にない場合もあるでしょう。そのような場合は、エアコンの効かない状況を乗り越える必要があります。
特に非常に暑い日や寒い日は、乗っている人の生死にも関わるので、暑ければ涼しく、そして寒ければ暖かくする応急措置が必要です。
オートエアコンなら手動操作をしてみる
エアコンが効かない場合でオートエアコン車は、エアコンスイッチを操作して手動に切り替えてエアコンが効くか試してみましょう。
オートエアコンの場合、手動で風量を最大にすることでエアコンが効くことがあります。というのも、オートエアコンの場合、センサーからの情報で風量を調節しているのでもしセンサー異常なら、手動にすることで風量を変えられる可能性があるからです。
冷たい風が全く出ないなら窓ガラスを全て開ける
暑い日に、全く冷たい風が出ない場合、エアコンシステムの故障が考えられます。真夏は15分ほどで車内は危険な状況になるので、一刻も早く窓を全開にして外の空気を入れましょう。
よく、エアコンが効かないのに窓を閉めて送風で走行する人がいますが、これでは車内が涼しくなりません。暑さをしのぐには全ての窓を全開にするのが基本です。
コンビニなどで氷を購入
真夏では、窓を開けても車内はかなりの温度に達します。そこで、熱中症予防のためにもコンビニなどで氷や冷却できるグッズを購入しましょう。そして、首などの太い血管部分に当てて冷やすことが重要です。
また、ドリンクホルダーがエアコン送風口にあれば、冷たい飲み物を置くだけで車内が少し涼しくなるので、水分補給のためにも冷たい飲み物を購入してエアコン吹き出し口に置きましょう。
車載用扇風機やヒーターを購入
エアコンが故障しても、直ぐに修理に出せない場合もあるでしょう。暑い時には車載扇風機、寒い時には車載用ヒーターを応急的に購入して利用すると効果的です。
また、扇風機を使用する場合、DC/ACインバーターを購入すれば、車内で家庭用100Vが使用できるので、小型家庭用扇風機を車内に設置することも可能です。
まとめ
エアコンが効かない原因には、A/Cスイッチを入れていないケアレスミスもあるので、エアコン操作パネルの確認が肝心です。ただし、エアコン操作に不備が無くてもエアコンが効かないのなら、それはエアコンシステムに何らかの異常があると考えられます。
そして、クルマのエアコンが効かない時の修理は、かなり高額になることが普通なので、特に古いクルマは修理しても今後ほかの部分で故障が頻発する恐れがあるため、買い替えを選択したほうが良いでしょう。