異音の中で、走行すると「ゴー」という場合はサスペンションに問題がある場合がほとんどです。しかも放置していると、取り返しがつかない重大事故に発展する可能性があり危険です。
サスペンション構成パーツには数多くの種類がありますが、「ゴー」という異音は、回転する部分で発生している可能性が高いでしょう。
ここでは、走行中に発生する異音の原因と対処方法について解説し、交換が必要な部品の工賃についても併せてお伝えします。
自動車鈑金工場で高卒から10年ほど修行し、その後独立して自分の自動車鈑金工場を設立。中古車の粗悪さが許せず、中古車買取と鈑金修理を一つにしようとオークションに出入り。普通のクルマだけでなく修復歴車を落札して修理し直して販売や事故車を修復する仕事を20年程度行う。現在は財経新聞などにも記事提供を行うクルマ専門ライターとして活動中。
走行中の「ゴー」という異音の正体は?
走行中に「ゴー」という異音がタイヤあたりから聞こえた場合、加速している時なのか、定速走行中なのか、それともブレーキを踏んだ時なのかといった具合に、いつどのような状況で異音が発生するか調べます。
そして、状況別に異音の発生を分けると、以下の2種類になります。
- ①走行中の異音ならサスペンションの異常
- ②ブレーキを踏むと異音が出るならブレーキの異常
①走行中の異音ならサスペンションの異常
加速中や定速走行中そして直線やカーブに関わらず、「ゴー」という異音が発生するなら、サスペンション機構のどこかに異常が発生しています。
サスペンションは多くの部品で構成されていますが、「ゴー」という音が走行中に発生する場合、回転する部分から発生していることが多く、走行中のショックを吸収して上下に動く部品からの発生の可能性は極めて低いでしょう。
回転する部分として、タイヤも音の発生源になることもあり、サスペンション異常を探る前にタイヤが偏摩耗していないか確認することもポイントです。
そして多くの場合、サスペンションに異常があると以下の3つの部品に異常があることがほとんどです。
- A.カーブと直線の両方で鳴るならハブベアリングが劣化している
- B.ハンドルを切ると鳴るならドライブシャフトが怪しい
- C.直線で「ゴー」、カーブで「ゴリゴリ」ならボールジョイントが怪しい
A.カーブと直線の両方で鳴るならハブベアリングが劣化している
走行中に「ゴー」という異音でもっとも疑われる故障が、ハブベアリングの劣化です。ハブベアリングは、タイヤをはめている部分に装着されているベアリングで、タイヤが回るのもこのハブベアリングが装着されているからです。
そのため、ハブベアリングの摩耗が激しくなると、タイヤが回転するのに合わせて「ゴー」という異音が発生します。またハブベアリングは、4本のタイヤを取り付けている部分に全て取り付けられているので、1か所摩耗していれば、他の部分も同じように摩耗している可能性が高いでしょう。
ハブベアリングは、頻繁に交換する必要がないパーツですが、走行距離が10万kmを超えると消耗して交換が必要になる部品です。
放置するとタイヤが外れる原因に
ハブベアリングは、タイヤ(厳密に言えばホイール)をはめている部分に取り付けられているので、もしハブベアリングの摩耗が進み破損するようなことになれば、最悪タイヤが外れて重大事故に繋がります。
タイヤを外したことがある人はご存知かもしれませんが、ホイールを止める部分の中心に大きなナットが取り付けられています。この中にハブベアリングが圧入されており、ベアリングが破損するとナットごと外れてしまいます。
このように、「ゴー」という異音の原因がハブベアリングなら、早急に修理が必要です。
ハブベアリングの修理費用:数千円~5万円
ハブベアリングは、車種により取り付け方法が異なるので、交換費用も1か所数千円~5万円程度と大きくばらつきがあります。
ベアリング自体は、それほど高価ではなく数千円程度で購入できますが、工賃に大きな開きがあります。特に特殊工具が必要でなければ、部品代と合わせても1万円未満で修理ができます。
しかし、ハブベアリングは圧入されているので、プレス機が無ければ作業できません。このほか、サスペンションを分解する時に、通常の工具ではなく専門工具が必要な場合も車種によっては出てきます。すると、部品と工賃で5万円近くかかることも少なくありません。
B.ハンドルを切ると鳴るならドライブシャフトが怪しい
ドライブシャフトからの異音を疑う場合、ホイールハウス内にグリスが飛び散っていればほぼ間違いなくドライブシャフトが異音の原因です。
ドライブシャフトの異常で「ゴー」という異音が発生する車両は、FF車や4WD車です。FF車や4WD車は、フロントで駆動するのと同時に操舵輪も兼ねています。そこで駆動と操舵が行えるように等速ジョイントと呼ばれる部品が取り付けられています。
等速ジョイントは、内部に多くの金属製のボールが組み込まれており、どの角度でも回転が伝えられる仕組みです。そして、走行中の水しぶきや砂埃からジョイントを守るためにゴムのブーツが取り付けられています。
ブーツ内部には、専用グリスが充填されており、ブーツが切れるなど破損がなければ問題ありませんが、経年劣化によりブーツが切れると内部のグリスが飛び出し、等速ジョイントの動きを悪くさせます。
このような状況になると、走行中にカーブなどで「ゴー」や「ゴキゴキ」といった音が発生しはじめ、ひどくなると真っすぐ走行していても「ゴー」という異音がでます。
放置すると最悪走行不能に
ドライブシャフトブーツが切れ、中のグリスが外に飛び出し異音が発生している状態を放置すると、最悪走行不能に陥ります。
走行不能に陥る理由は、エンジンからの動力をタイヤに伝えるシャフトであるドライブシャフトの等速ジョイントが破損するからです。
問題ない時には、グリスが充填されたゴムのブーツ内で等速ジョイントは稼働していますが、異音が出るほどグリスが飛び出していれば、等速ジョイント内に砂などが入り込み、中の金属ボールを傷つけて破損させます。そのため、ドライブシャフトブーツが切れて異音が発生したら、早急に修理が必要です。
ドライブシャフトの修理費用:3万円~7万円
ドライブシャフトの修理費用は、3万円~7万円程度かかります。この費用の差は、ドライブシャフトが新品の場合に高額なので、リビルト品が多く出回っているからです。
ドライブシャフトは、新品の場合5万円前後しますが、リビルト品であれば1万円前後で購入できます。そして、交換工賃はだいたいどのようなクルマでも2万円前後が相場です。
ドライブシャフト交換は高額な修理費用がかかることから、自分で交換を考える人もいます。しかしドライブシャフト交換には、サスペンションを分解しなければできず、しかも特殊工具も必要になりますから、DIYで簡単に交換できる修理ではありません。
C.直線で「ゴー」、カーブで「ゴリゴリ」ならボールジョイントが怪しい
異音の種類が走行状況で変わるならボールジョインとの摩耗が考えられます。ボールジョイントはサスペンションに多く使用されていますが、一番摩耗するのがサスペンションロアアーム(サスペンションを下から支えるアーム)とナックル(クルマの前輪を保持するパーツ)の接合に使われるボールジョイントです。
ボールジョイントが摩耗すると、走行すれば「ゴー」と音がし、交差点を曲がる時には「ゴリゴリ」と金属をすり合わせるような音が聞こえます。
ボールジョイント内にはグリスが封入されており、金属のボールが滑らかに動くようになっています。それを保持するためゴムブーツが取り付けられていますが、経年劣化で裂けると、そこから水分や砂が入り込み異音の原因を作ります。
このほか、金属のボールなので長く使用すればすり減りガタが発生します。するとブーツが切れていなくても異音が発生します。
放置するとハンドル操作が効かなくなる危険が高い
ボールジョイントが摩耗している状態を放置すると、サスペンションが外れて大きな事故に繋がります。
ロアアームとナックルを繋いでいるのがボールジョイントなので、それがすり減り抜けてしまえば、タイヤはブラブラになりステアリング操作が全く効かなくなるでしょう。そして、最悪はタイヤが取り付けてあるナックルがサスペンションから外れ、車体が地面に接触する事故になるでしょう。
ボールジョイントの異常が発見されたなら、できるだけ早く修理しなければ非常に危険です。
ボールジョイントの修理費用:1万円前後
ボールジョイントは、新品の場合5千円前後で購入できます。そして工賃も5千円程度が相場なので、合わせて1万円もあれば1か所交換できます。
ボールジョイントは、安価なパーツなことと、少しDIYに詳しい人であれば自分で交換しようと考えます。しかし、ボールジョイントが摩耗して異音が出る頃には、ボールジョイントの取り付け部分がサビで固着し、取り外すには経験と特殊工具が無ければ難しいでしょう。
②ブレーキを踏むと異音が出るならブレーキの異常
走行している時はなにも異音がなく、ブレーキを踏んだ時だけ「ゴー」という異音が発生するなら、ブレーキになんらかの異常があると考えられます。
ブレーキは、クルマの止まるうえで非常に重要なパーツですから、異音がブレーキ時に発生するなら、早急に点検が必要です。
ブレーキが異音を発生させる異常がある場合、ブレーキパッドとブレーキローターの2つが考えられ、症状としては以下の2つが挙げられます。
- A.ブレーキを踏んで異音が出たらブレーキパッドの摩耗が考えられる
- B.ブレーキパッドに問題なければブレーキローターが怪しい
A.ブレーキを踏んで異音が出たらブレーキパッドの摩耗が考えられる
ブレーキを踏んだ時だけ「ゴー」という異音が発生するなら、ブレーキパッドの使用限度を超えていることが考えられます。
ブレーキパッドは、金属のベースプレートに摩擦材を貼り付けてあり、この摩擦材が摩耗して無くなると、金属のベースプレートがディスクローター(ブレーキパッドが挟み込む円盤状の部品)に当たり「ゴー」という異音を発生させます。
このほか、ブレーキパッドを作動させるブレーキキャリパーに異常があり、ブレーキパッドをブレーキローターに押さえつけるキャリパーをスライドさせるスライドピンが固着しても「ゴー」という異音が発生します。
ディスクブレーキは、円盤状のブレーキローターをブレーキキャリパーが挟み込みクルマを止める装置ですが、異音が出る原因は、ブレーキローターがレコード盤のように振動するためです。
放置するとブレーキがキ効かなくなり大事故に繋がる恐れが
ブレーキを踏んで「ゴー」という異音を放置すると、最悪ブレーキが効かなくなり、重大な事故に発展する可能性が高いでしょう。
また、ブレーキから異音が出ている場合、通常とは違うブレーキの作動をしているので、放置すればブレーキシステムに大きなダメージを与え、修理費用は高額になります。
一般的に、ブレーキパッドが減ってくると、パッドウェアインジケータ ーと呼ばれるセンサーがドライバーに警告します。
昔からある機械式の場合、パッドに取り付けられた金属片がパッドの使用限界に近づくと、ローターで引きずるようになり、「キーキー」と音を発します。この他、一部の高級車や輸入車には、パッドの中に電気式のセンサーが埋め込まれており、すり減ったことで断線して警告灯を点灯させ、ブレーキパッドの交換時期を知らせます。
通常は、このような警告方法でドライバーに知らせますが、まだ走行できるからと警告を無視して走行を続けると、「ゴー」という音に変わります。
ブレーキパッド交換費用:6千円~
国産車の一般的なブレーキパッド交換費用は、フロント左右一組8千円前後~、リア左右一組6千円~です。
ただし、純正でブレンボ製といった高性能ブレーキを採用しているクルマで、純正ブレーキパッドを使用するとフロント左右一組5万円、リア左右一組5万円程度します。
ブレーキパッドは、ディーラーであれば純正品と交換しますが、街の整備工場などでは純正同等品との交換がほとんどです。この違いはもちろんコストであり、純正同等品は純正に比べ安価です。
だからといって、純正同等品が制動力に問題があるのかと言えば全く問題ありません。ただし、ブレーキパッドの素材が異なるので、ブレーキのタッチが純正品と変わる可能性があるでしょう。
そして、ブレーキからの異音が片側から発せられていても必ず左右一緒に交換です。ただし、前後同時に交換する必要はありません。もちろん、点検して交換時期を迎えていれば交換は必要です。
B.ブレーキパッドに問題なければブレーキローターが怪しい
ブレーキから「ゴー」という音が出る原因に、サビ付いたブレーキローターが原因の場合があります。
特に大雨が降り、そのまま暫く放置したクルマの場合、ローター表面にサビが発生してブレーキを踏むと「ゴー」という異音を発生させることもあります。
そして、もっとも深刻なのがブレーキパッドの使用限界を超えて使用し続け、ブレーキパッドの金属のベースプレートがブレーキローターに押し付けられローター表面に大きなキズを作る場合です。
ブレーキローターが原因で「ゴー」という異音が全く発生しないわけではありませんが、サビていたり、傷ついていたりしたなら、ブレーキローターが原因と考えられます。
放置すると制動距離が長くなり事故の危険が高まる
ブレーキローターがサビて「ゴー」という異音を発生しているだけなら、暫くすると異音は収まりますが、ブレーキパッドの摩耗でブレーキローターにキズが入るほど放置していると、制動距離が長くなり、ドライバーの意図した場所で停止できない恐れがあります。
また、ブレーキがいつもより効かないことから、重大事故に発展する恐れがあるので、ブレーキから「ゴー」という音が出たら、直ぐに点検整備しなければ危険です。
ブレーキローター修理費用:1万5千円~3万円程度
ブレーキローターを修理する場合、研磨で済む場合と交換が必要な場合の2種類があります。そして、研磨の場合の工賃は1枚脱着工賃込みで1万5千円程度、ブレーキローター交換なら2万円~3万円程度です。
ただし、高級車やスポーツモデルなどでは特殊なブレーキローターを使用していることがあり、その場合は1枚2万円以上し、工賃を合わせると3万円~4万円以上になるでしょう。
サスペンションから異音が出た時の対処方法
サスペンションからの異音に気が付いたら、できるだけ早く点検整備する必要があります。その時に、どのような異音なのか的確に点検整備を依頼する業者に伝えることが肝心です。
また、修理することを前提としていても、予想を上回る修理見積を提示された場合は、買い替えを検討する必要もあるでしょう。
そこで、サスペンションから異音が出た時の対処方法は以下の2点です。
- ①音に気が付いたらすぐに整備工場に相談する
- ②修理費用が高額なら買取業者に相談
①音に気が付いたらすぐに整備工場に相談する
走行中に、いつもと違う異音に気が付いたら、できるだけ早く整備工場に相談します。その時に、どのような走行状況でどのような音がどの辺から聞こえるか的確に伝えます。そうすれば、どこの問題が発生しているかおおよその見当がついて、点検整備が早く済みます。
整備工場は、ディーラーでも街の整備工場でも構いません。しかし、街の整備工場を選ぶ場合は、経験豊富な工場を選びましょう。というのも、サスペンションからの異音は、同じ疑似音でも多くの部品に当てはまるため、経験がなければ間違った修理方法を取られることがあるからです。
②修理費用が高額なら買取業者に相談
高額な見積もりが提示されたら、修理するより買い替えを選んだほうが得になる場合もあります。特に10万km以上走行していて、修理する場所が複数見つかった場合などは、修理しても他の部分で故障が発生する可能性があるからです。
特に、異音の点検修理を整備工場で見積もりを取ると、予想を上回る金額になることも珍しくありません。それは、サスペンションの部品の値段が高額であることと、サスペンションの分解整備工賃が高いからです。
そこで買い替えを考えるなら、愛車を処分しなければなりませんが、異音があるから廃車処分にするのではなく、中古車買取業者に査定してみると良いでしょう。
異音の状況やクルマの人気度にもよりますが、少し故障していても中古車買取で意外に良い値段で査定額を提示されることもあるからです。
異音の発生でクルマの売却を考えるなら一括査定が便利です。クルマの査定額は業者により大きく異なりますから、できるだけ多くの業者に査定依頼することがポイントです。そこで一括査定なら一度に多くの業者に査定依頼できるので、今すぐチェックしましょう。
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サスペンション異常で買取が難しいなら廃車買取へ
中古車買取業者に異音があるクルマを査定して、0円と言われることがあります。その場合、直ぐに廃車処分するのではなく、廃車買取業者に相談しましょう。
廃車買取業者は、使えるパーツを再販しているので、サスペンションからの異音で故障があっても、そのほかのパーツに問題がなければ、かなり良い金額で買取されることがあります。
サスペンションの異常で中古車買取されない車種は、サスペンションの修理費用よりクルマの価値が低い場合です。例えば、年式が10年以上で走行距離も10万kmをオーバーしたクルマや、中古車市場であまり見かけない不人気車種はかなり厳しいでしょう。
中古車買取に出すのが嫌なら、今の愛車が中古車市場で幾らで販売されているか検索し、修理見積と比較します。もし修理見積のほうが高い、またはほとんど変わらないようであれば、廃車買取に相談しましょう。
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まとめ
「ゴー」という異音が走行中に発生したら、サスペンションの故障を疑います。そして、そのほとんどは、回転する部分であるハブベアリングかドライブシャフトの故障でしょう。
また、サスペンションからの異音は重大事故に直結する不具合が多いので、異音に気が付いたらできるだけ早く点検修理することが重要です。
そして修理費用も比較的高額になる場合も多いので、古いクルマや走行距離が著しく多い場合は買い替えたほうがお得になるでしょう。