クルマを売るときに、故障した部分を隠したい人も多いでしょう。確かに故障した部分がないほうが高く買い取ってもらますから、故障は知られたくないと考える気持ちもわかります。しかし、故障箇所を隠し通して売れたとしても、後に故障が発覚すると大きなトラブルに発展します。
そこで重要なことは、故障箇所を包み隠さず話して買取してもらう事です。故障したクルマは、それ相応の魅力を感じて買い取る業者もあるので、故障しているからと負い目に感じることはありませんし、隠して売るようなことも必要ありません。そこで、故障したクルマを売るときに、トラブルを避ける方法や故障を隠して売るリスクを解説します。
自動車鈑金工場で高卒から10年ほど修行し、その後独立して自分の自動車鈑金工場を設立。中古車の粗悪さが許せず、中古車買取と鈑金修理を一つにしようとオークションに出入り。普通のクルマだけでなく修復歴車を落札して修理し直して販売や事故車を修復する仕事を20年程度行う。現在は財経新聞などにも記事提供を行うクルマ専門ライターとして活動中。
もくじ
クルマの故障を隠して売ってはいけない!その理由やトラブルは?
クルマは、長く乗ればいずれ故障する乗り物です。また、不幸にも大きな事故を起こして修理を行ったクルマに乗り続けている人もいるでしょう。しかし、故障しているクルマや修復歴があるクルマを売るときには、正直に買主に伝える義務があります。
しかし、見つからなければ大丈夫だろうと考える人もいるでしょう。そこで、故障や修復歴のあるクルマを隠して売ると、どのようなトラブルが生じるのか、そして隠して売ってはいけない理由を詳しく解説します。
クルマの故障が売却後に発覚すると再査定の連絡がくる
クルマの故障は、持ち主が気付かない部分の故障も多くあります。例えばサスペンション(クルマの走行中の衝撃を緩和するパーツ)の部品の中には、運転している持ち主が気付かないうちに劣化が進んでいることが多くあります。
また、中古車購入時に相場より安い中古車を見つけ、そのクルマが事故車とは知らずに購入しているケースも少なくありません。
これらの問題は、使用者は全く気が付かないことですが、クルマの査定をしたときに見抜かれることが多く、もし査定時に発覚しなくても、買取後に再度店舗でチェックしたときに発覚することも珍しくありません。このような場合は、必ず買取店から売り主に対して連絡があります。
再査定の内容によっては減額や売却金の返還要求をされることも
査定時に、故障箇所が発覚しなかった場合、故障がないクルマとして査定額を提示してきます。この金額で契約を完了した場合、後に故障箇所が発覚すると買取店から再査定をしたいという連絡が入ります。
再査定では、故障を前提とした再査定が行われるので、大幅な減額となるケースがほとんどですが、なかには商品価値がないと判断され廃車処分料を逆に請求されるケースもあるでしょう。
ここで、最初の査定で故障を見逃した査定士に責任があると突っぱねても、故障している事実は変えられませんから、減額もしくは廃車を受け入れるしかないケースがほとんどです。
故障を知っていたのか知らなかったのかは関係ない
再査定には、故障していた場所を指摘されますが、故障していた場所を売り主が知っていたかどうかは、この時点において問題ではありません。買取業者では、買い取ったクルマに隠れた故障が見つかったことが重要であり、故障分の金額を売り主から取り戻すことしか考えていません。
そのため再査定は、故障していたかどうかを売り主が知っていたかを責めるためのものではなく、改めて正確なクルマの価値を査定することを目的とした行動です。
クルマの故障や修復歴は隠し通せない
クルマの査定では、クルマのことを知り尽くしたプロが査定を行います。そのため、クルマのどこが故障しやすいのか、そしてどこを見れば事故車だとわかるのか、チェックすべき箇所を熟知しています。
そのため故障や修復歴を隠していても、プロの目をごまかすことは、ほぼ100%不可能です。
クルマの査定士は故障や修復歴を見抜くプロ
クルマの買取査定士は、専門の教育を受けてクルマの査定士として活躍しています。故障箇所の発見方法や、クルマの修復歴を見抜くにはどこを確認すれば良いかなど、一般の人が知り得ない知識を豊富に備えています。
故障の見抜き方は、走行装置や快適装備などにおいて故障頻度が現れやすい場所から細かく確認します。とはいっても、故障する時には意外と似たような状況が起こることが多いので、ポイントを押さえて確認していることがほとんどです。
また修復歴の場合も、正面衝突・側面衝突・後方衝突がどの程度起きているのかを確認します。これも、オークションなどで修復歴となるクルマの修理方法が決められているので、その部分に手が入れられているかを細かく確認します。
査定時に見抜けない故障や修復歴は後で発覚する
クルマの出張査定で、自宅に査定士が訪れて査定を行う場合、どうしてもクルマの駐車場の状況などから、踏み込んだ査定ができないこともあります。また、査定士も人間なので見落とすこともあるでしょう。
そこで買取店では、査定士の見落としがないかどうかダブルチェックを掛けるのが普通です。これは、買い取ったクルマをオークションに出品して、万一にも故障が発見されてクレームになった時の損害を防ぐためです。
店舗で行う再チェックは、クルマの査定士が行うチェックより厳しく行われます。一般に査定士はクルマを駐車場に置いてある状態で行い、エンジンをかけて各機能をチェックする程度です。ここ迄でも確かに査定は可能ですが、実際にリフトアップしなければクルマの下回りなどはわからないこともしばしばあります。
そのため、店舗で再チェックする場合は、クルマをリフトアップして各部のチェックを行うことがほとんどです。また各店舗では、選りすぐりのクルマのプロが再チェックを行うので、些細な不具合も見逃しません。このことから、査定時に故障箇所が見つからずに一安心したとしても、ほぼ次の段階でクルマの故障は発覚します。
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わざわざ故障を隠さず故障車専門の買取業車に売ろう!
クルマの故障や修復歴を隠しても、査定時に100%見抜かれてしまいます。故障や修復歴を隠してビクビクしながら買取店を利用するより、故障車を専門に買い取る業者に依頼したほうが安心です。
そこで、買取店ではなく故障者専門店に故障車を売るメリットについて詳しくご紹介します。
故障があるクルマをどこに売れば良いか迷った時は専門業者に相談
故障しているクルマは、すでに近場しか走行できなくなっている場合など、不便極まりないことでしょう。そのようなクルマは、なるべく早く売却したいと考えますが、その場合は故障車を扱う廃車買取業者に相談しましょう。
廃車買取業者には、事故車や故障車を専門に扱う業者や、不動車など全てに不具合のあるクルマを扱う業者まで様々です。
故障したクルマであっても一度は買取店で査定してみる
故障したクルマでも、走行可能なことは多くあります。また、慣れ親しんだ相棒を廃車買取に出すのをためらう人も多いでしょう。そこで、一度は買取店で査定してみることです。
買取店で査定すれば、現在の故障車の価値を知ることができます。ただし、正直に故障している部分を打ち明けることが重要です。価値がある希少車は、故障を打ち明けてもらったことで査定しやすくなり、高値を提示してもらえることもあるからです。
ただし、故障しているクルマが、現在も多く流通している国産車でメジャーな車種の場合には、過度な期待は禁物です。
売ることなど不可能と思える故障車は廃車買取専門業者に
買取店で値段が付かずに処分料が発生すると伝えられた場合や、どう考えても売ることが不可能と思える故障車は、廃車買取店に相談すると良いでしょう。
廃車買取店では、事故車や故障車だけでなく、不動車となったクルマの買取を行っています。また、廃車買取では、クルマを処分する費用が一切かからず、故障車なのに買い取ってもらえることが多いので、故障車をお得に処分することができます。
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故障車を廃車買取業者に売却できる理由
故障車のような価値のないクルマを廃車買取では喜んで買い取ってくれます。それには特殊な流通ルートが存在し、クルマとして流通させるというより、クルマを部品として流通させているからです。
故障車の流通方法には、大きく分けてパーツとして流通させる方法と、海外に輸出する方法の二種類があります。そこで、賢く廃車買取を利用するためには、愛車がどのようなクルマなのかを知っておくと廃車買取を選びやすいでしょう。
専門業者は故障したクルマはパーツとして流通させる
一般的に、どのような故障車や事故車でも買い取ってくれる流通方法は、クルマを分解してパーツとして流通させる方法です。
現在、クルマのパーツを新品で購入すると高額になることが多く、中古パーツやリビルトパーツ(再生品)として求める人が多くなっています。
例えば、大手オークションにも中古パーツを目にすることが多いでしょう。そのなかには、廃車買取業者により買い取られたクルマから分解されたパーツを販売していることが多くあります。
そのため、国内で需要があるクルマは、廃車買取でかなり良い値段で買い取ってもらえます。しかしその反対に、国内で走行するクルマの数が少ない車種は、廃車買取で引き取ってもらうことはできますが、価格は期待できないと言えるでしょう。
専門業者は海外で修理できるクルマは海外にクルマとして販売する
国内で販売される国産車の中には、海外で高い人気を誇る車種が多くあります。例えばトヨタハイエースやホンダフィット、トヨタビッツやトヨタカローラなどです。
このように、海外で高い人気を誇る日本車は、日本国内にある故障車などのほか不動車も盛んに輸出されています。
特に、東南アジアなどの新興国市場は日本車の人気が非常に高いですが、修理するパーツは中古品やリビルトパーツを主に使用しています。そのため、日本国内で廃車となったクルマは新興国などにパーツとして輸出されています。
このほか、日本国内で修理すると高額な修理費用がかかり、クルマを手放すことを余儀なくされるようなクルマも、新興国では破格な安さで修理されて転売されています。故障車でも人気がある車種や最新の車種は、海外専門に輸出する廃車買取業者が高く買い取る傾向にあります。
廃車買取のおすすめ業者7選!中古車買取との違いと処分費用のメリットを詳しく解説!故障車を売るときに大切なのは契約書を隅々まで確認しておくこと
故障したクルマを買取店に売却する時には、契約書を十分に確認することが基本です。
契約書には、買取店が不利にならないように仕向けた内容が明記されていることが多く、内容を理解しないまま買取店に故障車を販売すると、思わぬトラブルに発展する恐れがあるでしょう。
契約書を隅々まで確認する
クルマの売買契約書は、クルマ購入時も同じですが、売るときにも必ず買主と売り主の間で取り交わされる重要な書類です。
この契約書には、決められた書式というものが存在しませんから、買取業者独自で定めた様式を使用していることがほとんどです。しかし、書式は違えども内容に関しては、どの店舗でも似通っています。もちろん注意する部分も同じなので、ポイントを押さえて隅々までチェックすることが重要です。
- 売却するクルマの情報(ナンバープレート、自動車車体番号の一致)
- 売却金額(売却価格に自動車税や自賠責保険などの還付が含まれているか)
- 車両引き渡し日(引き渡しの方法と場所)
- 瑕疵担保責任期間(売却日時から何日後までか)
瑕疵担保責任を理解しておくことがトラブルに巻き込まれない方法
瑕疵とは、キズ・故障・欠陥のことで、この責任がどこまで及ぶものか、そしてその期間はいつまでなのか確認しておくことが重要です。責任の範囲には、知らなかった瑕疵まで売り主に責任があるのかといったことも、重要な項目なので確認しておきましょう。
瑕疵担保責任は、売却後に瑕疵が発覚したときに買主が売り主に対して修理費用を請求することが可能です。また、契約書内に瑕疵によって生じた損害を賠償請求する旨が契約書に記載されていることもあります。また、契約を破棄する場合に解約請求されることもありますから、瑕疵担保責任を理解してトラブルに巻き込まれないように注意しましょう。
キャンセルも可能その場合のリスクも理解しておく
クルマの買取査定後、買取金額を手にしてから買取店からクレームの電話をもらうことがあります。それは、査定時に見つけられなかった故障が後に発見された場合ですが、その後の買取店とのやり取りで、納得がいかない場合は買取のキャンセルを申し出ることも可能です。
ただし、キャンセルできる期間が決まっていることが多く、契約後の三日から一週間がほとんどです。このキャンセル可能期間中であればキャンセルできますが、キャンセル料が発生することを理解しておくことが重要です。
【コラム】そもそも故障したクルマを売っても問題はないの?
故障したクルマに乗っていれば、クルマを売却することに後ろめたい気持ちになる人も少なくないでしょう。そして、故障したクルマなど売っても良いはずがないと思ってしまいます。
しかし故障したクルマは、買う側と情報の共有ができていれば、売却することが可能なことが多いです。そこで、故障したクルマを売ることに問題がない理由を解説します。
故障したクルマを買う側と共有できていれば問題ない
故障したクルマは、そのままの状態で全く走行できない場合や、メンテナンスをしながらであれば走行できる場合など、様々なトラブルがあります。また、快適装備に問題があるだけで走行には支障がないこともあるでしょう。
こういった故障の状態については、持ち主が把握しているので、売却を決めたら買主にどこが故障しているのかを申告します。そして、買主が故障箇所を納得した上で買取してもらえるのなら、故障車を売却しても全く問題ありません。
買主は、クルマの車名やクルマの年式などから、クルマの価値を見出します。そういったなかで、クルマの状態によりクルマの価値が大きく変わりますが、故障箇所を共有することで、買主も安心して購入に踏み切れるのです。よって、正確に故障箇所を伝えることで故障車の売買は成立するでしょう。
問題となるのは査定額が下がるのを恐れて故障を隠すこと
故障していることを隠したいと考える人は、故障によりクルマの査定額が下がることを恐れているからでしょう。
故障していることを隠して売っても、いずればれてしまいます。これは、どんなに巧妙に隠しても、相手は故障を見抜くプロですから隠し通すことは不可能という事を述べてきました。
そのため、故障車を販売する時に問題となるのは、故障を隠して買取店で販売することです。
クルマは、長く乗っていれば故障が発生するのは当たり前ですから、故障している事を査定士に話しても特に驚かれることはありません。逆に隠していたほうが、驚きを隠せずに大きな問題となるでしょう。
故障はクルマの価値を下げることになるので、クルマを少しでも高く売却したいと考えると隠したくなる気持ちもわかります。しかし、それは買主を騙して販売することになり詐欺と同じと思われても仕方がありませんから、故障を隠してクルマを売ることがないようにしましょう。
まとめ
クルマに故障はつきものです。故障を隠してクルマを売ることにメリットはなく、かえって後で大きな問題になるでしょう。トラブルを避けるためには、故障箇所を全て正直に申告することです。
クルマの故障や修復歴は隠し通せるものではありません。仮に査定士がその場で気が付かなくても、後に買取店での点検で発覚することがほとんどでしょう。もし、そこも無難に通り過ぎたとしても、オークション会場やオークションで買い取った中古車店でも検査が行われるので、多くのプロの目がクルマの故障を見抜くことになります。
故障は、どんなに巧妙に隠しても100%発覚することを理解し、故障車を売るときには全て申告して買取店で査定依頼してください。そして買取店で故障車に値が付かなかった場合は、故障車買取専門店に相談するようにしましょう。