誰しも今までに一回ぐらい「下取りは買取に比べ査定が低い」と聞いたことはないでしょうか。実際に、買取と比べて下取りは高い査定が付かないことが多いです。しかしながら、下取り査定にも良さはあります。ですので、損得を検証する前に「損」と言い切るには少々早すぎるでしょう。
この記事では、下取りのメリットとデメリットを解説します。さらに、愛車を少しでも高く売却する方法についても、詳しくお伝えします。
私立大学文学部でフランス文学を学んだ後、フランスのフの字もない仕事を5年。輸入車の販売会社に入社したら配属がフランス車ディーラーでした。並行輸入のイタリア車に乗りながらフランス車の正規ディーラーで営業をしており、そこで販売も下取りも経験してきました。車の売り買い、両方の立場が分かります。
クルマの下取りは損なのか?
現在クルマを所有している方は、愛車が古くなって段々と維持費が嵩むようになってきた、家族が増えた、新型車に一目惚れしたなど、様々な理由で新車への乗り換えを検討するようになるでしょう。乗り換えの際、新車と入れ替えに愛車を下取りに出すのは、ごく一般的な流れです。しかし、クルマを買った流れでそのまま下取りもお願いすると損をしてしまうかもしれません。
下取りは損と言われているのはなぜか、損をしないためにはどうしたら良いのか、詳しく解説しますので一緒に見ていきましょう。
多くの場合、下取りは買い取りと比べて安い査定となる
下取りと買い取りは、クルマを売るという結果は同じなのですが、下取りのほうは査定額が安くなりがちです。クルマを買い取ること自体が目的である買い取りと比べて、あくまで下取りは新しいクルマを顧客に買ってもらうことがメインだからです。
査定が安くなる理由1:下取り価格は他社と競う必要がない
下取りは、新しいクルマを購入することと引き換えに愛車を買い取ってもらう手続きです。そのため、新車販売を取り扱っている店舗しか下取りに対応することができません。
新車ディーラーは、新しいクルマの値引き額で他店と競うことがあっても、下取り額では他店と張り合いません。下取り額を上げるよりも値引きをしたほうが、お得感を顧客に認識されやすく、下取り車を高く仕入れることにリスクはあってもメリットはないからです。
こうした店側の事情も知った上で、愛車の売却先を考えましょう。
査定が安くなる理由2:ディーラーはクルマの販売が目的で下取りはオプション
下取りは、自社のクルマを買ってくれる顧客に対して、「今お乗りのおクルマを買い取ってあげますよ」、というサービスの一環です。
新車ディーラーと同じ系列で中古車販売店を展開しているケースもありますが、一般に、ディーラーは買い取り事業を専門としているわけではなく、あくまで新車販売のオマケです。買い取り店ほどのノウハウは持っておらず、下取り査定の研修や教育を十分に受けていないセールスが対応することも少なくありません。クルマの買い取りを専門に取り扱って生業としている業者とは、そもそも土台が違います。
値付けの仕方についても、それぞれに相違点があります。買い取り店では、常に変動する中古車相場を観察して、その都度の状況に見合った最高額を提示してくれます。それに対してディーラーは、「レッドブック」や「イエローブック」などのリアルタイムではない価格表をもとに、常に一定した査定額を算出していることが多いです。そのため、ディーラーでの下取りは他店でも似たような金額になることが多く、大幅アップは望めません。
さらに、買い取り業者では、純正オプションはもとよりオーナーが後付けした非正規のアフターパーツまで査定額に上積みしてくれる場合があります。対するディーラーの下取りは、オプションの有無は査定額に影響しないか、プラスになっても少額であることが多いでしょう。車好きで、愛車のカスタムが自慢という方には見逃せない重要ポイントです。
査定が安くなる理由3:他社の中古車は自社で販売できないことが多い
新車に乗り換えるとき、ディーラーに下取りしてもらった愛車が、その後どうなるかご存じでしょうか。正解は、ほとんどの場合オートオークションという業者専用の自動車オークションに転売されています。
言うまでもなく、下取り額よりオークションの落札額が安ければ、その差額はディーラーの損失になります。落札額は断定できないので、リスクを取りたくないディーラーは、「最大これぐらい出せますよ」という査定額より少し余裕を見た金額で提示せざるを得ません。
新車ディーラーを経営する会社が、その傍らで同じメーカーの中古車を販売していることも珍しくありませんが、基本的に他社ブランドの中古車は販売していません。事例として挙げるとすれば、ドイツ車ディーラーの中古車展示場に国産車が並んでいるなんて様子、見たことがありませんよね。
しかし、他社といっても例外はあります。例えば、ディーラーの経営母体の会社が、複数メーカーのディーラーを展開している場合です。イタリア車に乗っている人が、フランス車に乗り換えるとします。このとき、フランス車ディーラーの会社が実はイタリア車のディーラーも運営していたとしたら、そちらに持っていって自社で再販できるので、通常の下取りよりも査定額が高めになることが期待できます。
ただし、必ずしも損とは言えない側面もある
ここまで見てきたように、クルマは買い取りに出したほうが下取りよりも高く売れる場合が多いと言えます。しかし、ディーラーの下取りには全然メリットがないのかというと、そんなことはありません。下取りを利用したほうが結果的にお得になる場合もあります。
クルマの「売り」と「買い」の窓口が一本化されており手続きが簡略化できる
クルマの売却を検討するためにディーラーをハシゴしたり、カタログや見積もりとにらめっこしたりするのは、けっこう疲れますし時間もかかるものです。
繰り返しになりますが、新しいクルマを購入する際に、売買契約の取引を行う店舗に愛車を買い取ってもらうのが下取りです。新しいクルマに目が留まって店舗に足しげく通い、最終的に契約を取り交わすプロセスに至る頃には、ディーラーの営業マンとも、ある程度の信頼関係を築けていることでしょう。しかし、そこで下取りではなく買い取りを利用しようとすると、今度は買い取り店のスタッフともイチからやり取りをする必要が生じます。
愛車を下取りに出すなら、必要書類の提出先はクルマを購入したディーラーのみで済みます。さらに下取りの場合は、基本的に納車まで自分のクルマに乗っていられるのも利点の一つ。契約後も今まで通りクルマに乗っていて、納車日には下取り車と入れ替えに新車に乗って帰るという流れで済みますので、非常に楽です。
同じブランドの乗り換えなら査定額も高くなる傾向
新車ディーラーの場合、クルマなしの状態から新しくクルマを購入する「新規客」や、他社ブランドのクルマから自社のクルマに乗り換える「新規客」よりも、「既納客」と呼ばれる自社ユーザーからの乗り換えを大事にしたいと考えています。なぜなら、いつ来店してくれるか予測できない新規客と違って、車検時期などの情報が既に手元にある既納客なら、買い替えを予測しやすいからです。
もちろん、ディーラーのクルマのことは自社が一番詳しくて当たり前なのですが、このような事情で既納客を囲い込みたい思惑もあります。さらに、先程も触れました通り自社ブランドのクルマは自社で認定中古車として再販できるケースが多いです。そうすると売値を予測できますし、転売しないので手数料が嵩むこともないでしょう。それ故、高めの査定ができると言えます。
値段の付かないクルマを廃車費用をかけずに処分できる
古いクルマや走行距離の伸びたクルマに乗っているような方の場合、買い取り店でも金額が付かなかったり、あまつさえ廃車費用が必要になったりすることもあり得ます。
ディーラーに下取りをお願いする場合は、そうした廃車費用は基本的にかかりません。また、店舗によっては、オマケで査定額に数万円を付けてくれたり、リサイクル料金分だけ付けてくれたりもします。一概に買い取り店に売却しましょうと言い切れないのには、こうした事情があります。
愛車を少しでも高く売りたいなら「買い取り」を利用しよう
ここまで見てきた通り、下取りは損になるケースが多いため、愛車を高く売りたいとお考えの方は是非とも買い取りを利用しましょう。買い取りに出したほうが、下取りよりも10万円以上高い査定額になることは珍しくありません。原則的に買い取り査定は無料で行ってもらえますし、クルマの買い替えという頻繁には発生しないイベントだからこそ、買い手も売り手も悔いのない選択をしたいものです。
「買い取り」のほうが「下取り」より査定額が高い理由は?
クルマを売るなら、下取りに出すより買い取りのほうが高くなるというのは、かなり一般に浸透している考え方ですが、そう言われるのには当然のごとく理由があります。
その理由というのが以下3つです。
- 同業他社と競わせることができるから
- 買い取り業者は買い取ったクルマを売ることで利益を得ているから
- アフターパーツなどの付加価値を加点してくれるから
理由1:同業他社と競わせることができるから
下取りは競う必要がないというのは前述の通りですが、逆に買い取りの肝となる要点は、複数社に競わせることにあるといっても過言ではありません。クルマの買い取り額を抑えて売るときの利益を大きくしたい、または損失を抑えたいという考え方は、新車ディーラーも買い取り店も同じですが、買い取り店は高めの査定額を付けてでもクルマを買いたい場合があります。
複数社に買い取り査定を依頼した場合、クルマを買い取れなかった業者は査定に使った時間が無駄になってしまいます。メーカーの作ったクルマを売るディーラーと違い、買い取り店はクルマを買わないことには商売が成り立ちません。そこで、特に人気車種の場合などは多少高い査定額を提示してでもクルマを買い取りたいという背景があるのです。
加えて、買い取り店にもそれぞれ得意な分野があり、店舗によって得意とする車種は異なります。特に趣味性の高いクルマにお乗りの方などは、専門店に査定を依頼すると、その価値を正しく見積もってもらえるでしょう。なお、スポーツカーや4WDなど様々な専門店があります。
理由2:買い取り業者は買い取ったクルマを売ることで利益を得ているから
当たり前のことですが、新車ディーラーはクルマの販売で利益を得ています。一方、クルマの買い取り店は、買い取ったクルマを転売することで利益を得ています。買い取ったクルマが、別の地域のオークションならより高く売れるといった知識があるので、「レッドブック」などの価格表に頼らざるを得ないディーラーよりも、査定額を上げられる可能性が高いです。
理由3:アフターパーツなどの付加価値を加点してくれるから
ディーラーの下取りでは、オプションの有無で査定額が大きく上がることはありません。一方で買い取り店に査定を依頼した場合、オプションだけでなく自分で後付けしたアフターパーツもプラス評価してくれるケースがあります。
クルマの見た目にこだわって、格好良いアルミホイールを履かせても、性能アップのために給排気や足回りのパーツを替えても、ディーラーでそれが良い方向に作用することはないと言っても過言ではありません。しかし、アフターパーツなどに詳しい買い取り店であれば、多少なりとも伸び代が期待できます。
「買い取り」は思っていたよりラク
ディーラーをハシゴして何人もの営業マンに会って、やっと購入するクルマが決まったというのに、今乗っているクルマの売却先も新たに考えなければならないのかと思うと、ゲンナリしてしまうかもしれません。しかし、愛車を売ることは、新しく購入するクルマを探すことよりも遥かにラクです。
ポータルサイトから一括で申し込めて出張査定にも応じている
中古車を検討したことがある方なら、一度は見たことがあるであろうカーセンサーなどの中古車ポータルサイト。こちらを経由して、幾つかの情報をパソコンやスマホを使用して入力するだけで、簡単に複数社に買い取り査定を申し込むことができます。
大手の買い取り店は軒並みクルマの出張査定に対応しているので、わざわざ実店舗まで足を運ぶ手間が省けます。同じ日時に複数の買い取り店を立ち会わせて、その場で価格を競わせるようなこともでき、クルマを購入する際の下取りと比べると格段に手間は少ないです。
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売却先が違っても、結局のところ用意する書類は同じ
クルマという高額商品の売買は、そうそう頻繁にあるものでもなく、思った以上に面倒に感じることでしょう。新車ディーラーに提出する書類の用意にも手間がかかるのに、買い取り店とのやり取りも生じるのは、かなり億劫と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうでもありません。
クルマの売り買いに必要な書類は、どこの店舗でも同じ。ただ提出先が2箇所に分かれるというだけなので、労力はほとんど変わりません。
大手なら代車の貸し出しもある
買い取り店にクルマの買い取りをお願いしたときは、ディーラーの下取りと異なり、今乗っているクルマは即座に引き渡さねばなりません。新車が納車されるまでの期間、クルマでの移動ができないのは不便です。そんなときは店舗に相談してみましょう。大手買い取り店であれば、代車の貸し出しに応じているケースが少なくありません。
もちろん、買い取り店が代車の貸し出しに応じられないことも考えられますし、貸し出しは何週間までと期間が決められており、納車の期日まで間に合わないことも考えられます。そこで、クルマを買ったディーラーにも相談してみることをおすすめします。ディーラーも、他店の買い取りを利用したにも関わらず、代車を貸し出してくれることがあります。ただし、有償での貸し出しになる可能性もありますので、ご留意ください。
「買い取り」で、さらに査定額をアップさせるには?
下取りより買い取りのほうが高く売れるケースが多いことは、おわかりいただけたことでしょう。では、その買い取りの中でも、さらに査定額を上げるにはどうしたら良いか、詳しく解説いたします。
一括査定を利用して買い取り業者同士を競わせる
中古車ポータルサイトから一括査定を申し込むことができるというのは、先程お伝えした通りですが、その際は3~4社ほど同じ日時でアポを取ると良いでしょう。査定の立ち会いが一度で済むため時間の節約になるのは言うに及ばず、査定額のアップも期待できるからです。
買い取り店同士の競合については繰り返しお話ししてきましたが、言い換えると、競合がいなければ買い取り店でも低めの見積もりになる危険性があると言えます。それを防いで少しでも高く売ろうと思ったら、一括査定を通じて同時査定を利用しない手はありません。
同時に複数社を立ち会わせるとき、オークションを真似て段々と査定額を上げていく方法と、各業者と個別に話してそれぞれの査定額を比較する方法の二通りがあります。どちらでも自分がやりやすいと思う方法を選べば良いでしょう。ただし、買い取り店同士が裏で話を合わせていることもあるので注意が必要です。対策としては、一括査定で選出された業者に加えて地元の中小業者を呼ぶ、他のサイトの一括査定も並行して利用することなどが考えられます。
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クルマが高く売れる時期を選んで買い取ってもらう
まずは大前提として、クルマの価値は日々下がっていきます。いきなり見出しと矛盾することを言うようですが、高く売るにはなるべく早く売却するに越したことはありません。
それを踏まえて、クルマを売る時期を選ぶのも一つの方法です。クルマにもやはり、需要が高まる時期が存在します。特に、進学や就職など新生活を控えた3月はクルマが売れますので、1月から2月にかけて査定額が上がることが期待できます。9月も転勤や異動で意外と需要があり狙い目です。買い替えありきでクルマの売却を考えたときは難しいかもしれませんが、参考にしてみてください。
ほかに、クルマの売却時期を考える上で気を付けることは、車検の時期です。車検を通した直後にクルマを乗り換えるのはごく少数派だと思われますが、車検を通した直後だからといって査定額が大きく上がることはありません。クルマは車検を通す前に売りましょう。
珍しい車種なら、そのカテゴリーの専門店を利用する
スポーツカーや輸入車といった趣味性の高いクルマを始めとして、いわゆる大衆車とは違うニッチなクルマも多数販売されています。しかし、そのようなクルマはファミリーカーと違って絶対数が少なく、大手買い取り店では細かい部分の価値まで判断しきれないことがあります。
クルマの買い取り店にも各々のジャンルごとに専門店があり、一般的にはかなり安くなってしまう車種も査定額が大幅にアップするかもしれません。
事実、筆者自身も並行輸入の外車という非常に特殊な車種に乗っていますが、ディーラーでの査定と比べて専門店の査定額が3~40万円は高かったです。
次に、2台目として所有していたマイナーな軽自動車を手放さなければならなくなったとき、その車種ばかりを扱っている店舗に依頼すると、マニュアルであることが評価されて最終的に11万円で買い取ってもらえました。中古で総額38万円で買って2~3万kmは乗ったクルマです。通常、登録から10年以上経過した軽自動車には金額が付きませんので、この金額で買い取ってもらえたのは売却先を選んだからこそのものだと言えます。
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現代では、残価設定型ローンの登場などで買い方が多様化して、月々の負担を抑えながらクルマに乗れるような選択肢が増えました。しかし、それでもクルマが高額商品であることに違いはありません。
場合によっては、どんどんクルマを乗り換える方もいますが、通常は2回目の車検や3回目の車検を通してから、新しいクルマに乗り換える方が多いのではないでしょうか。大抵の方は、数年に1回のイベントになるでしょうから、「買い取り」を利用して悔いの残らない形で愛車とお別れしましょう。
ここまでお話ししたとおり、買い取り店にクルマを売却するのも意外と手間がかからないものです。面倒だからと利用しないのはもったいないですよね。
下取りのほうがお得な場合もあると書きましたが、「自分のクルマに価値なんてない」と考えていても買い取り店によっては値段が付くこともあります。最終的に下取りに出すにしても、買い取り店での査定額を知ってからのほうがスッキリと決められるでしょう。