「全損車が売れる」…にわかに信じられない人も多いでしょう。
実は全損車であっても商品価値があり、中古車としてオークションに出品されることも有ります。
また、中古パーツのニーズが高まっていることから、走行不能となった全損車も意外な高値で買取してもらえることがあります。
この記事では、全損車がどのくらいの価格で売れるのか、そして一番賢い全損車の売却方法を詳しく解説します。
自動車鈑金工場で高卒から10年ほど修行し、その後独立して自分の自動車鈑金工場を設立。中古車の粗悪さが許せず、中古車買取と鈑金修理を一つにしようとオークションに出入り。普通のクルマだけでなく修復歴車を落札して修理し直して販売や事故車を修復する仕事を20年程度行う。現在は財経新聞などにも記事提供を行うクルマ専門ライターとして活動中。
もくじ
全損車にも価値がある!状態別の買取価格相場
全損車は廃車処分するしかないと思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、全損車はお金に換える方法がいくつも存在します。そして、全損の程度や車種などによって最適な方法を選べば、思いがけない金額で売却することができます。
ときには200万円以上で買取してもらえることもあり、そのまま廃車処分にすることは非常にもったいない場合があります。
全損車がどの程度で買取してもらえるのか、車種やクルマの状態ごとに以下の3つが挙げられます。
- 年式が新しければ200万円を超える価格で買取されることも
- 海外で人気のある車種は20万円以上での買取が期待できる
- 古いクルマの全損車の買取価格相場は0円~10万円程度
①年式が新しければ200万円を超える価格で買取されることも!
全損車で高く買取してもらえるクルマは、年式が新しいクルマです。
具体的な年式は、新車登録から3年以内のクルマ、すなわち新車購入から最初の車検が訪れる前。
新車の車両本体価格が400万円以上するようなクルマの場合、全損状況によっては200万円を超える買取事例も多くあり、年式が新しければ全損車といっても非常に価値のあるクルマであることがわかります。
全損車が高く売れた事例
具体的な高価買取事例は以下の通り。
車種 | 買取価格 |
---|---|
アルファード | 200万円以上 |
ハイエース | 100万円 |
国内で人気の平成28年型アルファードの場合、クルマの側面が大きく損傷して100万円の修理費用がかかることから全損扱いとなったクルマでも、200万円以上で買取してもらった事例があります。
また、海外で人気の令和元年型ハイエースの場合で、修理費用が300万円を超える損傷にもかかわらず、100万円で買取された例があります。
②海外で人気のある車種は20万円以上での買取が期待できる
国内だけでなく海外で高い人気を誇るクルマは数多く存在し、そういったクルマの場合は全損車であってもかなり期待できる金額で買取してもらえます。
海外で人気のあるクルマと言えば、例えばトヨタ・ハイエースやトヨタ・アルファード、日産・キャラバンといった、大人数が乗れるタイプや荷物を多く載せられるタイプが人気のほか、悪路走行もこなせるトヨタ・ランドクルーザーや三菱パジェロといったクルマが人気です。
これらの車種の場合、水没車と呼ばれる水害に合ったクルマでも高額で買取してもらえる可能性が高いのも特徴です。
水没車というのは、どこまで水没したかにより買取価格が大きく変わってきますが、国内で部品として流通させるには、水害に影響のない外板パーツ(前後バンパー、フロントフェンダーといった電気を使用していない部品)程度しか需要がありません。
しかし、海外では考え方が異なり、現状で問題なく使用できれば、正常と判断されて販売されます。
また海外の中で特に新興国では、日本ではほとんど見かけない古い車種が現役で走行しているのを多く見かけます。
日本で全損扱いとなったクルマで修復可能な車種であれば、新興国に現状のまま輸出してその国の安い賃金で修復すれば、高く売ることが可能です。
そのため、新興国を中心に、修復が不可能でも他の同じクルマと掛け合わせて1台のクルマとして販売するなどの方法があることから、海外で人気があるクルマは高く買取してもらえる可能性が高いでしょう。
例えば三菱パジェロなどは、10年落ちの全損車でも40万円を超える金額で買取してもらえる事例があるほか、やはり10年落ちのスバルインプレッサWRXなども70万円という高額で買取された事例があります。
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③古いクルマの全損車の買取価格相場は0円~10万円程度
年式が古いと、全損車の買取は無理だと考える人も少なくありませんが、実際は廃車処分するよりかなりお得です。
例えば廃車処分にするなら、全損車をスクラップ工場にレッカー移動する料金、そしてスクラップ工場で廃車処分する料金と書類手続き代行費用などがかかりますから、持ち出しのお金がかなり必要となるのが普通です。
だいたい廃車処分すると、レッカー移動に15,000円程度、解体費用に20,000円程度と、合計で最低でも35,000円程度の廃車処分費用がかかると考えられます。
しかし、全損車を廃車買取業者や事故車買取業者などに相談すれば、上記のような諸費用が一切かからない業者がほとんどなうえ、クルマに価値があると業者が見積もれば10万円前後での買取が期待できます。
また、特に需要がある全損車や希少車などは、かなりの高値になることも少なくありません。
例えば、希少車として海外でも人気があるシビックtypeRなどは、エンジンが故障するほどのダメージがある10年以上前の車種でも60万円以上で買取された事例があります。
シビックtypeRなどは非常に特殊なクルマですが、古いクルマには部品としての需要は国内だけでなく海外でもあるので、全損車であっても買取されることが多いでしょう。
なぜ全損になったクルマも売れるのか?
全損車は、誰が見ても廃車処分しか思い浮かびませんが、実際は高値で買取されることが多くあります。しかし、なぜ全損車を売ることができるかご存じの方は少ないのではないでしょうか。
全損車が売れる理由には、以下の2つが挙げられます。
- 全損車は走らないクルマだが部品としての需要があるから
- 修理して転売する業者がいるから
理由①全損車は走らないクルマだが部品としての需要があるから
全損車が売れる理由として大きなウェイトを占めるのは、部品として流通させられることが挙げられます。
全損になる理由には、修復を諦めるほどの事故や水没などが挙げられます。そして、そのどちらの全損車にも使える部品は少なからずあることから売ることが可能です。
全損車を専門に買い取る業者として廃車買取や事故車買取がありますが、そのどちらも買い取った後に全損車を分解して中古部品として流通できるパーツを取り出します。
そのため全損車であっても、使えるパーツが多い、または高価なパーツが使えるとなれば、高値で買取してもらえます。
特に、事故による全損車でエンジンにダメージがないような場合は、かなりの高値で買取してもらえることが多くなりますが、逆に水没車ではエンジンがダメージを受けていることがほとんどなので、事故車に比べて買取価格は安めとなっています。
中古パーツを全損車から取り出した後の流通経路は、国内での販売はもちろん、海外向けに輸出しています。そのため、国内で人気のないパーツでも海外で人気があれば、高く買取してもらえる可能性があるでしょう。
特に、海外で人気のある車種の全損車は、海外輸出を得意とする業者に相談することで思いもよらない高値で買取してもらえることもあります。
全損車でも車両火災のように使えるものが残っていないような場合を除き、廃車買取業者や事故車買取業者に相談すると良いでしょう。
理由②修理して転売する業者がいるから
事故車を購入することに抵抗を感じている人も多くいますが、逆に事故車であっても価格の安さのメリットから抵抗なく購入しているユーザーもいます。
そのため、比較的新しい車種の全損車で修復可能であれば、全損車を買取修復して中古車として販売する業者もあります。とはいっても、修復するにはかなりの設備と技術が必要なので、多くの修理業者は参入することができません。
そこで、実際に国内で事故車を修復して販売している業者は、ユーザーの希望車種を聞き、そのうえでその車種と同じできるだけ程度の良い全損車を事故車オークションで購入します。
その後、ユーザーからのオーダーに合わせてクルマを仕上げますが、一般的な中古車を購入するより安く、しかも自分の好みでカスタムも可能なことから、知っている人はかなりお得に購入できるシステムです。
しかし、実際に事故車はクルマのイメージが悪く、国内で修復して再販するより海外に輸出してから修復されて再販されることがほとんどです。
海外では日本人のようにクルマを厳しく見る目がほとんどありません。特に新興国ではクルマの形が希望する車種であれば問題なく、大げさではありませんが、クルマの塗装にムラが有っても気にする人はほとんどいません。
このように、技術的に日本に劣っている新興国であっても、ある程度の形に戻すことが可能な全損車は、海外輸出に強い買取業者に相談すれば、意外な高値で買取してもらえることがあります。
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全損車はどこで売るべき?状態別のおすすめ売却先3つ!
全損車は売れるということがわかりましたが、全損車はどこでも売れるわけではありません。また、全損車であっても、中古車買取店でも買い取ってもらえることもあり、全てが廃車買取業者に相談すれば良いというわけではありません。
全損車には様々な状態がありますが、その状態別で買取専門店を分けると以下の3つに分けられます。
- 骨格まで損傷してなければ中古車買取に相談
- 骨格まで大きく損傷した全損車は海外輸出業者が強い
- 大きな損傷で修復不能な全損車は廃車買取に相談
①骨格まで損傷してなければ中古車買取に相談
骨格まで損傷が及ばない全損車で走行可能であれば、中古車買取で買取が可能なことがあるので相談してみると良いでしょう。
全損車となった場合でも、クルマ全体にキズがあるだけで骨格には何の問題もない場合があります。そういった場合で機関にも問題がなければ、クルマとして使い続けることが可能です。
このような全損車種は、古いクルマの場合に多く見られます。それは、古いクルマの場合、事故を起こして骨格まで及ばない損傷でも、修理費用が車両保険で定めている全損の場合に支払われる金額を上回ることがあるからです。
例えば中古車買取価格で、30万円で買取してもらえるクルマでも、車両保険で全損時に支払われる金額の上限が10万円に設定されていることが多くあります。そういった場合に損傷個所を全て直す時に10万円を上回る修理費用となれば全損扱いになります。
そのような損傷の場合で、走行に支障がないような場合は、中古車買取店に相談しましょう。
廃車買取であれば、どんなクルマでも買取可能ですから、動いていれば使えるパーツが多いと判断されて中古車査定で0円と言われたクルマにも査定額が付くことが多くありますから、一度は廃車買い取りに相談してみてください。
②骨格まで大きく損傷した全損車は海外輸出業者が強い
骨格まで大きく損傷した全損車は、国内で中古パーツとして流通させる業者より、海外で修復して再販している業者のほうが高く売れることがあります。
全損車となった場合で、かなりのウェイトを占めるのが骨格まで大きく損傷したクルマでしょう。そして、骨格まで損傷したクルマの修理は高額な修理費用となることが多く、全損車となっています。
骨格とは、クルマのボディを支える重要な部分であり、走行性能から静粛性まで関係してくる部分です。そのため、骨格を大きく損傷した場合は、全損車として諦める人も多くいます。
そこで、骨格まで大きく損傷して全損扱いとなったクルマの場合は、事故車買取業者に相談することをおすすめします。そして、事故車買取でも海外出人気がある車種であれば、海外輸出に強い事故車買取業者に相談しましょう。
特に大きく損傷した海外で人気のある全損車は、海外輸出専門とする事故車買取業者が買取に強く、他の買取店より高値で買取してもらえます。主なクルマとしては、悪路走行に強く、多くの人や荷物が載せられ、ハイブリッド以外の車種です。
ハイブリッド車は、事故車再生を主に行っている新興国で再生させる技術力がないので、たとえ中古車として人気があるハイブリッド車であっても、全損車の人気はほとんどありません。
ただし、ハイブリッド車は国内で人気がある車種なので、中古パーツの需要が高いことから、廃車買取業者では高値で買取してもらえる可能性が高いと言えます。そこで、ハイブリッド車の全損車は、廃車買取業者に相談しましょう。
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③大きな損傷で修復不能な全損車は廃車買取に相談
全損車の中には、修復が不可能なほど大きな損傷となっている場合もあるでしょう。そういったクルマは、廃車買取に相談するのがベストです。
全損車が修復不能か見極めることは一般ユーザーには難しいので、全損車を引き上げた業者や入庫した業者にどの程度の損傷なのか聞いてみることです。
特に修復不能となるような全損車は、多方向からの大きな損傷であることが多く、例としては事故でサンドイッチとなり、前後が大きく損傷した場合は修復がかなり難しいと言えるでしょう。
廃車買取業者では、どのようなクルマでも買取していますから、大きく損傷している部分が多数あっても買取してもらえるほか、たとえ0円査定であってもクルマの引き取りから廃車処分費用まで無料で請け負ってもらえるので、廃車処分としてスクラップ工場に相談するより断然お得です。
※廃車買取については「廃車買取のおすすめ業者7選!通常の中古車買取との違いと処分費用面のメリットを詳しく解説!」で詳しく解説しています。合わせてこちらの記事もご覧ください。
廃車買取のおすすめ業者7選!中古車買取との違いと処分費用のメリットを詳しく解説!下取り価格がつかなかったようなクルマも引き取ってもらえる可能性あり
全損車となったクルマから買い換えるために自動車販売店に相談する人も多いでしょう。しかし、自動車販売店で全損車を下取りとしてお願いしても、逆に廃車費用を請求されることがほとんどです。
そこで、全損車から乗り換えを考えているなら、自動車販売店に下取りの相談をせずに、自分で廃車買取業者に相談するのが良いでしょう。廃車買取業者であれば、査定価格が0円であっても経費を支払うことなく全損車を処分できるので、自動車販売店にお願いするよりお得と言えます。
ただし、自動車販売店の中には、全損車を下取りとして新しいクルマから値引きを提示してくれる場合もあります。その場合は、自分で廃車買取業者に見積もり依頼を行い、お得なほうで全損車を処分すると良いでしょう。
車両保険に入っている場合も買取査定額と保険金を必ず比較しよう!
全損車となったオーナーの中には、車両保険加入の方も多いでしょう。その場合の全損車認定は保険会社によって行われることとなります。
保険会社による全損車認定は、基本的に車両保険の支払い上限を超える修理費用が掛かると修理見積が出された時です。この見積もりは、修理工場でも行いますが、保険会社からアジャスターと呼ばれる事故車査定をする専門家が事故車をくまなく調査して修理費用を算出します。
この時に、修理業者の出した見積もりを参考にしますが、全損扱いとなる金額はアジャスターが提示した金額が優先されます。
車両保険に入っている場合に、全損査定となった場合に取るべき方法は、そのまま保険会社の見積もりで出された保険金を受け取る方法と、自分で買取業者に引き取ってもらう方法の2種類になります。
そこで全損車の売却で重要なのは、車両保険での支払額と廃車買取などでの買取額とどちらが高く売れるか比べることです。しかし、保険金を満額もらってしまうと全損車は自分で処分できないこともあるので注意してください。
※保険を使って全損車から新車に買い替える方法については「【全損車からお得に買い替える方法3つ】保険を使う方法と買取に出す方法を徹底解説!」で詳しく解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
【全損車からお得に買い替える方法3つ】保険を使う方法と買取に出す方法を徹底解説!全損になった場合は車両保険の保険金と買取金額を比較すると損しない
車両保険に加入しているクルマで、全損扱いとなったクルマの処分は、そのまま保険会社が提示する保険金を受け取って終わりにする方法がほとんどでしょう。しかし、車両保険が少なければ、納得できない人も少なくないのではないでしょうか。
そこで、事故車買取で査定をとってみるようにしましょう。例えば、車両保険では50万円が上限とされるクルマであった場合でも、全損車の価値があれば事故車買取に依頼することで、それ以上の金額で買取してもらえることがあります。
それは、車両保険が契約時の時価相当額で決められるからです。その時価相当額には一定の幅を各保険会社で持たせていますが、その金額から外れて車両保険を設定することができません。
そのため、国内需要より海外需要の高いクルマの場合、時価相当額以上に価値があることも少なくなく、全損車を事故車買取で査定すると車両保険の支払額より多いこともあります。
損をしないためには、車両保険を即決でもらうのではなく、事故車買取などで見積もりを取り、比較することも高く売却するには必要でしょう。
保険利用する場合は保険会社がクルマを引き取り売却できないので注意
車両保険に加入している場合に全損車となり保険で手続きを済ませてしまうと、その後全損車は保険会社により引き上げることとなるため、自分で全損車を売却することはできません。
なぜ、自分のクルマなのに保険会社により保険金が支払われた後、自由に売却できないかというと、保険会社が車両保険で全損車の保険を支払った時点で、保険会社の名義にするか下請けの処分業者の名義にすることになるからです。
ただし、この方法は保険会社により異なりますが、全損車を保険で満額受け取った場合は、勝手にクルマを処分できないことが保険約款に記載されています。
そのため、自分で勝手にクルマを買取店で処分することができないほか、保険契約時に取り付けられているカーナビや純正パーツを取り外して販売することも禁止されています。ただし、後つけによるパーツは問題ありません。
また、相手がある事故で、相手の対物保険を使用して全損車の保険を満額支払われた場合は少し異なります。対物保険により保険を満額支払われた場合は、保険会社は被害者から処分依頼がない限り基本的にクルマを引き上げることはしません。
そのため、同じ全損車でも車両保険では勝手に売ることはできませんが、相手の対物保険であれば全損車を自由にできることになります。
しかし、いずれにしても全損車となったら、早めに買取業者に相談して一番高い値段を付けた業者に販売してしまうのがお得でしょう。
まとめ
全損車は、動かないほどの損傷を負ったクルマのことがほとんどですが、全損と決まったら、早めに様々な買取店に相談するのがコツです。
また、自動車保険により全損車となったクルマに対して保険が支払われる場合も、保険会社の言いなりではなく、多くの買取店で査定してみることも高く売るためには大きなポイントです。
保険に関係なく、全損車は売ることができることを念頭に、全損度合いとクルマの状況を照らし合わせて、お得な値段で売れる買取店を探すことができることを覚えておきましょう。